【ルーヴル美術館】アポロンのギャラリー必見ポイント完全ガイド|黄金の装飾と王冠の宝石を愛でる

ルーヴル美術館の中でも、ひときわ豪華な空間として知られるのが「アポロンのギャラリー(アポロンの間)」です。

天井いっぱいに広がる壮大な神話画、王権を象徴する装飾、そしてかつてフランス王室が所有していた宝石コレクション──。

このギャラリーは、単なる展示空間ではなく、フランス王の権威と美意識を体現した特別な場所といえます。ヴェルサイユ宮殿の「鏡の間」のモデルとなったとも言われています。

本記事では、初めて訪れる方でも理解しやすいように、見どころを中心にわかりやすく解説します。2026年4月現在、アポロンのギャラリーは閉鎖中ですが、再開後の見学が何倍も楽しくなる予習ガイドとしてまとめました。

アポロンのギャラリーとは?

アポロンのギャラリーは、ルーヴル美術館 のドゥノン翼2階(フランス式1階)に位置し、旧ルーヴル宮の中庭クール・カレと、17世紀に建設されたグランド・ギャラリーを結ぶ場所にあります。

もともとは「プティット・ギャラリー」と呼ばれる回廊として建てられましたが、1661年の火災で大きな被害を受けました。その後、ルイ14世の治世下で再建され、太陽王の象徴であるアポロンをテーマにした壮麗な装飾空間へと生まれ変わります。

宮廷画家シャルル・ル・ブラン が中心となって構想した豪華な装飾に加え、19世紀には ウジェーヌ・ドラクロワ が天井画『大蛇ピュトンを射抜くアポロン』を完成させました。

この壮大な天井画と華麗な装飾は、アポロンのギャラリーをルーヴルでも屈指の豪華な空間にしています。

アポロンのギャラリーの見どころ

天井画|太陽神アポロンの世界

ギャラリーの北側には四大元素のうち『地』を表す作品(ジョゼフ=ブノワ・ギシャール作《大地の勝利、またはキュベレの勝利(1850年)》)が、南側には『水』を象徴する作品(シャルル・ル・ブラン作《ネプチューンとアンフィトリテの勝利 (1667-1669年) 》)が配置されています。

ギャラリーの北と南に対(つい)になって配置されているこれら二つの天井画。実は、描かれた時期に200年近くの開きがあるという点に注目して鑑賞してみてくださいね。

北側の壁にかかる絵画は、「地」を象徴する『大地の勝利(またはキュベレの勝利)』(ジョゼフ=ブノワ・ギシャール作、1850年)

(出典: Wikimedia Commons)

北側の壁にかかる絵画は、「地」を象徴する『大地の勝利(またはキュベレの勝利)』(ジョゼフ=ブノワ・ギシャール作、1850年)
シャルル・ル・ブラン作《「水」ネプチューンとアンフィトリテの勝利》@アポロンのギャラリー

南側(セーヌ川側)には「水」を象徴した《ネプチューンとアンフィトリテの勝利》(シャルル・ル・ブラン作、1667-1669年)

(出典: Wikimedia Commons)

そして中央を飾るのは、19世紀ウジェーヌ・ドラクロワにより描かれたアポロンの栄光を称える傑作、『大蛇ピュトンを射抜くアポロン』です。

この作品は天井中央に据えられた最大の見どころであり、ドラクロワはル・ブランの様式に合わせるため、多くの素描や下絵を制作しました。絵画は床の上で描き、完成したものを天井に貼り付ける「マリュフラージュ」という技法を用いられました。

アポロンのギャラリーの天井中央部を飾る《ピュトンを打ち破るアポロン》ドラクロワ作
アポロンのギャラリーの天井中央部を飾る《大蛇ピュトンを打ち破るアポロン》ドラクロワ作
(出典: :Wikimedia Commons License: CC BY-SA 3.0)

18世紀、ルーヴル宮殿には王立絵画彫刻アカデミーが設置され、若い画家たちは「モルソー・ド・レセプション(入会制作)」と呼ばれる作品を提出することで、正式な会員として認められていました。

この制度のもとで制作された作品のひとつが、ジャン=ユーグ・タラヴァルによる《秋(またはバッカスとアリアドネの勝利)》です。

《秋(又はバッカスとアリアドネの勝利》タラヴァル作(1769年)

(出典: Wikimedia Commons, Public domain)

酒の神バッカスが勝利を祝い歓喜するシーンを捉えています。収穫と豊穣の歓びが人物のポーズで表現されていて、実りの秋を感じますね。

アポロンのギャラリーの天井画 《秋(又はバッカスとアリアドネの勝利》(1769年)

ストゥッコ装飾

天井の周囲には、王室彫刻家たちによる精緻なストゥッコ装飾(石膏による立体装飾)が施されています。

特に注目したいのは次のモチーフです。

  • 四大陸(アフリカ・アジア・ヨーロッパ・アメリカ)・・・擬人化された「四大陸」を象徴する装飾と奴隷二人が配置されています。(オーストラリア大陸は、当時まだ含まれていませんでした)
  • ミューズ(芸術の象徴)・・・詩や音楽などを司る女神たちで、アポロンが芸術の守護神であることを示しています。

また、大半が1667年から1670年にかけて制作された12か月を表すメダイヨンは、時間の流れがひと月ごと視覚的に表現されています。

アポロンのギャラリーの天井画の一部。「四大陸」(ヨーロッパ大陸)その横に「12ヶ月」を表す立体彫刻。
「四大陸」のうち《アフリカ大陸》を表すストゥッコ彫刻(手前左)。(出典: CC0 1.0)
その横には「12ヶ月」をテーマにした丸型メダイヨン。
これは何月を象徴しているのでしょうか…

タペストリー

壁面には、ゴブラン国立工場で制作されたタペストリーが飾られています。

描かれているのは、ルーヴル宮殿およびテュイルリー宮殿の建設に関わった王や芸術家たち、計28人の肖像です。

アポロンのギャラリー
アポロンのギャラリーの壁に飾られた28人の肖像はゴブラン織で出来ています。

これらは建築家フェリックス・デュバンの構想にもとづき、1851年から1861年にかけて制作されました。中央の4人の君主(フィリップ・オーギュスト、フランソワ1世、アンリ4世、ルイ14世)は、他より大きなサイズで表現されています。

ゴブラン織のアンリ4世肖像(タペストリー) ルーヴル美術館アポロンのギャラリー
アポロンのギャラリーの壁を飾る
ゴブラン織のアンリ4世肖像(タペストリー)

華麗なる展示品|王冠の宝石〜フランス王室の宝飾コレクション

アポロンのギャラリーでは、かつてフランス王室が所有していた宝飾コレクションが展示されています。ここでは、特に注目したい代表的な作品をご紹介します。

ル・レジェン(摂政ダイヤモンド)

フランス王室の宝石の中でも、最も有名なダイヤモンドのひとつが「ル・レジェン(摂政)」です。

1698年にインドで発見され、イギリスでカットされた後、1717年にルイ15世の摂政オルレアン公フィリップによって購入されたことから、この名で呼ばれるようになりました。

ル・レジェン(摂政) ⒸMusée du Louvre

もともとは約426カラットという巨大な原石で、カット後も約140カラットを誇ります。色は「第一の水(première eau)」と呼ばれる最高品質に分類され、ほぼ完全な無色透明を備えています。当時、西洋で知られていたどのダイヤモンドよりも美しいと評されました。

この宝石は、ルイ15世やルイ16世の王冠に用いられたほか、ナポレオンは自身の剣の装飾にも取り入れるなど、時代ごとに権力の象徴として扱われてきました。

ナポレオン(Le Régent) レジオンドヌール博物館 グロ作
第一統領時代のナポレオンの肖像画(ル・レジェンの付いた剣)
レジオンドヌール博物館 グロ作

ルイ15世の王冠

ルイ15世の王冠は、現存する唯一のフランス王の戴冠用王冠として知られています。1722年、ランスで行われたルイ15世の戴冠式のために制作され、正面には有名なダイヤモンド『ル・レジェン(Le Régent)』が配置されました。フランス王権を象徴する王冠として、その豪華さと精緻な装飾は他に類を見ないものでした。

ルイ15世の王冠(CC BY 2.0) ルーヴル美術館所蔵
ルイ15世の王冠(出典: CC BY 2.0)

王冠の頂点にはフランス王家の百合の紋章を形どった宝石が並び、頂部には『サンシー(Sancy)』というダイヤモンドが置かれていました。

戴冠式後、王冠を飾っていた宝石や真珠は模造品に置き換えられ、フランス王家の墓所であるサン=ドニ修道院に保管されました。ルーヴル美術館では1852年から展示されていますが、現在展示されている王冠も、宝石は模造品です。

ルイ15世の王冠 正面の大きなダイヤモンドがル・レジェンでした(展示品は現在レプリカ)
ルイ15世の王冠 
正面の大きなダイヤモンドがル・レジェンでした(展示品は現在レプリカ)
💎サンシー(Sancy)という名のダイヤモンド秘話

ルイ15世の王冠の頂点に輝くこのダイヤモンドは、約55カラット。縦横2センチくらいの大きさで、ほんのわずかに黄味がかった左右不対照の洋梨型をしています。

16世紀にインドで発掘され、「旅するダイヤモンド」と言われるほど、複数の王族の手に渡り、1594年頃アンリ4世下のフランスへやってきました。フランス革命後、王冠のダイヤモンドは外され没収。その後は100年の間ヨーロッパのコレクターの間を転々と…。1976年、ルーヴル美術館が購入し、フランスへ戻ってきました。
ヴェルサイユ宮殿所蔵の少年ルイ15世肖像画 (1727年頃ヴァン・ロー作) テーブルの上に置かれた王冠は、1722年の戴冠式のために制作された王冠と考えられる (Public domain)
少年ルイ15世肖像画
ヴェルサイユ宮殿所蔵
(1727年頃 ヴァン・ロー作)
テーブルの上に置かれた王冠は、1722年の戴冠式のために制作された王冠と考えられる
(出典: Wikimedia Commons)
《戴冠衣装のルイ15世》(1730年頃ヴァン・ロー作)、ヴェルサイユ宮殿所蔵(出典: Wikimedia Commons)
《戴冠衣装のルイ15世》
ヴェルサイユ宮殿所蔵
(1730年頃 ヴァン・ロー作)
(出典: Wikimedia Commons)
王笏(おうしゃく)、正義の手とともに描かれた公式肖像。
クッション上の王冠は、1722年制作のルイ15世の王冠の姿を伝えるものと考えられる。

ウジェニー皇后の王冠

第二帝政を代表する優雅な宝飾品として知られるのが、ナポレオン3世の皇后ウジェニーの王冠です。

1855年のパリ万博博覧会に合わせてナポレオン3世により注文され、その際皇帝用と皇后用と2点制作されました。

ウジェニー皇后の冠
ウジェニー皇后の王冠 (出典: CC BY-SA 4.0)

帝政の象徴である鷲とシュロの葉文様を組み合わせたデザインは、この時代に繰り返し用いられました。使われている宝石は、1354個のダイヤモンドと56個のエメラルド。そして8羽の黄金の鷲、ダイヤモンドとエメラルドでできたシュロの葉文様が交互に配置され、優雅なアーチを形作っています。

頂部にはブリリアントカットのダイヤモンドで形作られた十字架。当時パリの一流宝石職人の卓越した技術を物語っているようです。

この王冠は、画家フランツ・ヴィンターハルターによる1853年の皇后肖像画にも描かれています。この絵に描かれている真珠のティアラは2025年10月、ルーヴル美術館で発生した盗難事件に巻き込まれてしまいました。そのため、この黄金の鷲の王冠は現在、フランスに現存する数少ない王冠のひとつとなっています。

ウジェニ皇后肖像画 (Public Domain) 
ウジェニ皇后の肖像画 (1853年)
オルセー美術館所蔵
(出典: Wikimedia Commons)
右手の近くに王冠が描かれている。
ウジェニ皇后肖像画 (Public Domain) 
▶ 2025年ルーヴル盗難事件と王冠のその後

2025年10月、ルーヴル美術館で宝飾品を狙った盗難事件が発生しました。ウジェニー皇后の黄金の鷲の王冠も展示ケースから取り出されましたが、犯人が逃走中に落下させ、アポロンのギャラリー下で発見されました。

王冠は、取り出しの際および落下の衝撃により一部が潰れるなどの損傷を受けていましたが、修復可能な状態と発表されています。

現在、ショーメ、カルティエ、ブシュロンなど、フランスを代表する宝飾メゾンが修復への関心を示しており、その行方に注目が集まっています。
参考資料

https://www.louvre.fr/decouvrir/le-palais/soleil-or-et-diamants

https://panoramadelart.com/analyse/palais-du-louvre-galerie-dapollon

https://panoramadelart.com/analyse/la-couronne-personnelle-de-louis-xv

https://panoramadelart.com/analyse/le-regent

https://ja.wikipedia.org/wiki/フィリップ2世_(オルレアン公)

https://presse.louvre.fr/restauration-de-la-couronne-de-limperatrice-eugenie

https://fr.wikipedia.org/wiki/Galerie_d%27Apollon

“Louvre 主要作品”, Pierre Rosenberg, Editions, 1993

⛔️ 現在(2026年4月)、アポロンのギャラリーは修復のため閉鎖されています。最新の公開状況については、今後も本サイトで随時更新していきます。

最後に

アポロンのギャラリーには、フランス王朝の歴史を語るまばゆい王冠の宝石が展示されています。しかし、それだけではなく、天井画や壁面装飾というギャラリー自体が美術品と言える貴重な空間です。その歴史的背景にまで目を向けると、この空間の魅力はさらに深く感じられるはずです。

もっと詳しくアポロンのギャラリーの誕生の歴史について知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧くださいね。

約200年にわたって完成されたとは思えないほど、統一されたフランス古典主義装飾の美しさの秘密を解説しています。

今回はアポロンのギャラリーの見どころの一部をご紹介しましたが、今後、見どころ紹介《続編》として、さらに記事を公開していく予定です。お楽しみに。

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